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第42回 情熱で突破した男、の巻

 

 

あるところに一人の芸人がいました。

裸にテンガロンハット、ブリーフ一丁という奇天烈な出立ちで、わけのわからないことを叫ぶだけの芸風にほとんどの人がこう吐き捨てました。

『あんなものはテンションだけのキワモノ芸だ』

それでも彼は諦めませんでした。なぜならお笑いが好きだったから。

二十年以上! 評価されなくても、彼はずっとずっと芸人を続けました。相方が辞めても、親友と別れても、事務所を辞めても。なぜなら自分の考えた面白いことで人が笑う姿を見るのがたまらなく好きだったから。

そしてどれだけ馬鹿にされても何度も這い上がり、2016年 春、彼はついに誰もが無理だと言ったことを成し遂げました。それはまるでドラマ。なんと彼は日本で一番面白いピン芸人に選ばれたのです。

 

 

2年前の秋のある日のこと。その頃、芸人を辞めるかどうか迷っていた僕はこう思いました。

(一番お笑いを愛している人の姿を見れば、何か答えが見つかるかもしれない!)

場所は中野の小劇場。あいにくの大雨に客席はパラパラ。一番後ろの席についた僕。

暗転。出囃子。テンガロンハットブリーフ一丁といういつもの格好で「ぶっ殺す!!!!」なんて、またわけの分からないことを言いながら彼は登場しました。

 

ギャハハハハハ!!!!!!!!!!

 

ふと周りを見渡すと、みんな腹を抱えて笑ってました。うんことかちんことか酔っぱらいとか、街のヤバいおじさんのモノマネとか、下品極まりないネタばかり。だけどお客さんみんながよじれるように体を動かし、ヒーヒー言いながら心の底から笑ってました。これまで色んなお笑いライブを見てきた中で、ここまで一人一人が涙を流して笑っている姿を見たことがあっただろうか。。

毎日を窮屈に生きる人たちの発散、代弁、救済・・・それは笑うこと。

そして僕は気付きます。「笑い」って単純でいいんだってことに。

・・・

終演の挨拶。ステージに上がったスタッフたちに囲まれて、彼はまだギャグを続けます。

時計を見るともうとっくに終演時間は過ぎていて、それでも何度も何度も彼はギャグをやり続けます。

司会進行の芸人さんが言いました。「雨の中、こんなにお客さんが集まってくれてこの人、嬉しくて帰りたくないんだね」

彼はその芸人さんの言葉に返事もせずに、ギャグを、ギャグを、ギャグを!!!!!!!

 

僕は逃げるように劇場をあとにしました。中野ブロードウェイのアーケードの中をバイク置き場まで走りながらひとつのモヤモヤが僕を包みます。

(僕は彼ほど笑いが好きだろうか?)

ブンブンと首を振ってモヤモヤをかき消して、すっかり雨の上がった環状七号線をバイクをぶっ飛ばして家に帰ったことを覚えています。

・・・

それから2年経ち、現在。

誰よりもお笑いを愛する男が、今年日本で一番面白い芸人に選ばれました。

テレビで彼が優勝する姿を見て、涙がこぼれました。

 

 

 

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ハリウッドザコシショウさん!!!

面識はありません。だけど、僕もかつては同じ事務所でお笑い芸人の端くれだった男。同じ、とは、とてもとても言えませんが、せめて当事者だった身として心の底からお祝い申し上げます。

もしも「なんでハリウッドザコシショウのネタ見て感動すんねん」なんてヤジを飛ばす奴がいたら僕はそいつを許しません。

カッコイイってのはこういうことを言うんだよ。テメーわかってんのかコラ。

 

さて、全ての芸人よ。

この人がついに日本一になってしまったぞ。優勝から一番遠い所にいた人が情熱で優勝してしまった。

 

もう一度言う。

情熱で優勝したんだ!

 

もう小細工は何一つ通用しない!!

 

僕も全てに溶けるほどの情熱をもって頑張っていかないと。

 

 

 

感動をありがとうございました。